徒然なるままに読み耽りたり

活字狂いの主と友人二人の読書録風レビューサイト

カイナさん作 バベルの海

 

 今回のレビュー作品は、カイナさん作のバベルの海です。

 

 まず初めに言います。

 

カクヨムで一番素晴らしい物語は横浜駅SFでもオレオでもなく、このバベルの海です。

 

 これを上回る物語は今のカクヨムにはありません。断言とともに保証します。

 

 

 一つずつ解説していきましょう。

 

 まずこの物語はジャンルとしては旅物エポックファンタジーに分類されます。

 この時点でエポックファンタジーとはなんぞや? となる人が多いのは当然でしょう。

 

 エポックファンタジーとは、ハイファンタジーをさらに狭義に絞ったものだと僕は解釈しています。基本的には中世欧風な異世界ファンタジー作品のことを指すのが一般的です。

 具体的に作品を上げていけば、狼と香辛料やマグダラで眠れ、ゼロから始める魔法の書、あたりが代表的です。作者さんもこのあたりの本は読み込まれているそうですから、間違いでないでしょう。

 

 そして、旅物とついているのはこれがバイクに乗って海を探しに行く物語だからです。ある目的を持って街々を旅するファンタジーを旅物といいます。

 代表的なのは、先程も上げた狼と香辛料他ニ作品にキノの旅などが有名です。

 

 そしてバベルの海は、獣耳少女を伴ってバイクで青空のもと海を求めて塩原をバイクで突っ走る素晴らしいファンタジー旅小説です。

 

 もうこのイメージだけで面白さが確約されています。実際にこの絵面をあらすじから連想した僕は、カクヨムオープンの日からこの作品に目をつけていました。

 当然のようにその想像は当たり、とても感動したことはここまでの絶賛具合から伝わるかと思います。

 

 このサイトの最初の紹介作品がRustなあたりからもわかるとおり、僕は旅物エポックファンタジーを愛しています。

 狼と香辛料はすべてのファンタジー書きのバイブルだと思っていますし、自身の電撃への初公募も旅物エポックファンタジーでした。

 そこに獣娘が絡んでくるバベルの海を僕が愛してしまうのもむべなるかなというものです。(僕はケモナーの極みみたいなやつです。)

 僕の好きな要素だけを詰め込むとこんなお話が出来るんだろうなぁ、と思いながら読み進めさせていただいていました。

 

 さて、ここまでの話ではこの話の真の魅力が伝わっていないと思われます。

 どれだけ僕の好きなものが多いかはこれで伝わったと思うのですが、この物語それだけでは全然ないのです。

 

 とりあえず会話文とキャラクター性について語りましょう。

 このバベルの海の会話表現は、さすがと言わざるを得ない細かな配慮が配られています。

 物書きの人たちの中には、会話文をつくってしまう方がなかなか多く見られるのですが、この方は違います。自然な会話、その中に織り込まれる読者を飽きさせないテンポのいいジョーク、それでも崩れることのないキャラたちのキャラクター性。

 

 そう、キャラクターたちが一人ひとり生き生きとしていて、まるで本当にこの世界が存在していてそれを写し取ったかのようなのです。

 心情描写にもそれは現れていて、下手に演出のためにつくられた感情を主人公はじめヒロインも登場人物の誰もが持ちません。

 僕たちは単なる物語ではなく、彼らの本当の旅路を見守ることになるのです。

 

 これらは風景描写にも言えます。

 白の大地と呼ばれる海の干上がった塩原が主な舞台となるのですが、そこでの情景が目の前にあるかのように、余りにもリアルに書き記されます。

 そこでの人々の生活の描写は、あたかも本当にそこに人が住んでいるかのように錯覚させ、隅々まで描写された世界は絵がないのにも関わらず漫画のような迫力を持って僕たちに語りかけてきます。

 

 題材だけではないのです。確かな表現力、緻密な文章力の上にこの物語は組み上げられています。

 

 そして、このままだとずっと語り続けてしまいそうなので、最後にヒロインのリンちゃんの話だけさせていただきます。

 主人公イスカ君の活躍や鳴術のすごさなんかは、作中でぜひあなたに自分で知ってほしいものですから。

 

 というわけでヒロインのリンちゃんです。素直です。かわいいです。獣耳です。

 獣娘です!

 大事なことなので叫びました。かわいいです。なんかもう愛くるしいです。

 なんか愛が鼻から溢れてきそうな感じです。読めばわかります。僕じゃあ彼女のかわいさを表現しきれない……。伝えたいのに伝わらない感じがもどかしいです。

 

 まぁいまいち伝わりづらいレビューとなってしまったのですが、ここまでの世界観の完成度、キャラクターの魅力、文章表現の整然さを持ち合わせた小説は、なろうでもハーメルンでもほとんど見ません。

 バベルの海を読むためだけにカクヨムに来る価値ありですよ!

 

 本格旅物エポックファンタジー、バベルの海。

 あなたもこの旅路の果てに獣の国にともに行ってみませんか?

 

 

※追記です

 諸事情により現在カクヨムで読むことができません。

 作者さんのTwitterプロフからpixivの本作品に飛ぶことができるので、そちらでお読みください。

 カクヨムに復帰なされた場合はこちらの追記は削除いたします。