徒然なるままに読み耽りたり

活字狂いの主と友人二人の読書録風レビューサイト

ぐりーてぃあさん作 弓術世界の魔剣使い

 

 はい、今回のレビュー作品は、ぐりーてぃあさんの弓術世界の魔剣使いです。

 

 ファンタジー上位に常に食い込んでいる作品ですからご存知の方も多いのでは?

 

 今回は作者さんからも辛口で評価して欲しいと言われていますので、かなり厳しめに言及していこうと思います。

 レビューと評価を同時に行う感じです。

 

 まずはじめに言っておきたいのは、確かに辛口に評価していきますが、その面白さは確かであり、一読の価値がある作品であることに間違いはないということです。

 これをお忘れなきよう。

 

 

 さて、まずはこの作品をざっくりと紹介してきます。

 この物語は、弓が最強な世界において魔剣を手に入れたワナビな主人公が活躍していく和風ファンタジーです。

 ちなみにワナビとはwannabe のことであり、want to beの省略形をもじった俗語です。何かに憧れなりたがる者を揶揄する類の意味合いを持ちます。

 基本的に、カクヨムにいるプロ作家以外の作者さんのすべてがワナビ作家であると言ってもいいでしょう。そういった感じの言葉です。

 

 というわけでどこから触れていきましょうか。褒めるべき点からいきましょうか。

 

 

 ヒロインがかわいいです。

 いや、毎回言っているような気もしますが、本当です。適当に言っているわけではないんですよ?

 作品に人を寄せ付ける目玉と言ってもいい存在であるヒロイン。それがかわいい作品なんて、ごまんとあると皆さんは言いたいのかもしれません。

 ですが、みなさんの知っているヒロインたちは本当にかわいいのですか? 見た目がいいだけの間違いではありませんか?

 

 安心してください。この作品のヒロインは花丸をあげたいくらいかわいいです。

 問題は本当にヒロインであるかどうかが怪しいところなのですが……こちらは読んでのお楽しみですね。

 この作品のヒロイン、伊予里悠ちゃんは内面も素敵な女の娘です。後述しますが、この作品が和風ファンタジーだと認識できるのは、大部分が彼女の存在が大きいというのが僕の論です。

 大和撫子を現代風にアレンジしたらこんないい娘が出来上がるんでしょうね……嫁にもらいたいです。ちょっとばかり猟奇的なところもありますがそれくらいはご愛嬌というやつでしょう。

 

 

 そして、カクヨムの方のレビューでも書かせていただきましたが、これが一番の目玉です。

 弓術!

 

 なんとこの世界、珍しいことに剣でも魔法でもなく弓が最強です。

 正確には弓そのものではないのですが、弓をメインに置こうとするその発想はなかなかでてきません。それだけでも目を通す価値があるでしょう。

 これについては詳しく後述します。いいところと悪いところがありますので。

 

 

 さて、あといいところはキャラ造形でしょうか。

 きちんと主人公とヒロインのキャラが立っています。まだ序章でしかないので判断しづらいところなのですが、主人公の動機がしっかりしていて、行動に意味をきっちりと持たせられているところがいいですね。

 ワナビな主人公というのをうまく描き出しています。

 

 ですが、逆に言ってしまえば主人公格のキャラクターしかしっかりと作りこまれていません。

 脇役で登場するキャラクターが少ないこと、そしてそのキャラクターが無難にしか作られていないことは減点です。確かに無難な作りにはなっていますがそれ以上を読み取れない。及第点ではあるのですが、もう少し魅力的に描いてもいいかなと思いました。

 キャラクターが少ないというのは名前がついているキャラクター、つまり準レギュラー格のキャラクターが少ないということです。

 ここのキャラクターが少ないと物語が単調になりがちです。その点ハーレムというのは逆にやりすぎてしまった例ですね。管理しきれないキャラを出すのは論外ですが、少なすぎるのもまた話の展開に支障をきたします。

 ここについてはこれから増えていくと予想されるのであまりつつきませんが、現状だとそう考えてしまうという話でした。

 

 

 ここからは残念ながら指摘が多くなってしまいます。

 いい物語であるからこそもっと伸びて欲しいですからね。

 正直言うとファンタジーでもアイデアならばこれがダントツだと思っています。

 バベルの海は僕の趣味が完全に合致した作品なので、また別枠になるのですが……。

 

 

 というわけで、まずは世界観に触れていきましょうか。

 最初にこの作品は、弓が主流の世界で魔剣を使う主人公が活躍する和風ファンタジーだと説明しました。

 その上で言います。

 ぜんっぜん和風ファンタジーだと伝わってきません。

 地名は確かに和風ですし、剣道場弓道場、味噌汁などいろいろな方向から和をイメージしていることは読み取れるはずなのですが、全くそう認識できません。

 なぜなら、話の筋でやっていることが和風ではないからです。

 弓術、魔剣。ええ、よい設定です。ですが、これを和風でやる意味はあったのでしょうか?

 洋風なファンタジーだったとしても、全く違和感を感じずにこの作品を作りなおせるだろうと僕は思います。

 

 それはですね、まず一つに最初に外国から逃げてくる登場人物を出したこと。

 二つに弓や弓術の名前にルビで全然和風ではない名前をつけていること。

 そして三つ目に和の世界観でしかできないことを全くやっていないからです。

 

 この作品を和風でやっているのは、作者さんにとって弓か剣という存在が和風というものの括りだったか、あえて和風でこれをやったら面白いに違いないと思ったからでしょう。

 和風ファンタジーを書いているものとして言います。

 この作品は和風ファンタジーを名乗れません。カテゴリ的には和風ファンタジーですが、それまでです。

 拙作を引き合いに出すならば、拙作では限られた状況下を除けば徹底的にひらがなと漢字しか使わない縛りをかけています。

 カタカナが使われる機会を数えてみれば規則性が見つかります。

 それくらいやるのはやりすぎですし、実際そんなことを他の作者さんには望みません。ですが、なんとなくでしか和風と判断できないのはそれはどうなのでしょう?

 

 繰り返して言いますが、序章部分ですのでこれからはもっと和の世界観でしかできないことが出てくると信じています。

 ですが、今の時点ではこれが洋風ファンタジーなり現代アクションとしてリメイクされても、違和感を感じない程度にしか思えません。

 

 

 次に行きましょう。キャラクター造形、世界観と触れてきたので次は弓術について語りましょう。

 厳しめにいきます。

 まず弓というものを戦闘のメインにおいたのはとても素晴らしいです。今までになかなかないアイデアです。これだけで目を通す価値が有ることは前述しました。

 

 ですが、それに付随する設定がいけません。これは根幹に関わるところですから、今から修正することもできません。自作から活かしていただくために書きます。

 なぜ弓術という設定を作ってしまったのか? いえ、弓術はいいです。弓を戦闘のメインに置くからには必殺技が必要です。剣で言うソードスキルです。

 

 ですが、霊力という設定はどうしてしまったのでしょう? 弓、具体的には法弓を使えば霊力が扱えるようになる。弓を握る意外にはほんのひと握りの人間しか霊力を扱えない。

 ……その設定いりますか?

 魔剣を出すにあたって必死に弓との関係を考えたのでしょう。その架橋として考え出された設定だとは思うのですが、もう少し工夫できたように思います。

 霊力という言葉を使えば和風っぽくなるという思いつきも見えますね。魔族やエルフ、ドワーフなどの他種族が出てくるのに霊術というネーミングはいかがなのでしょう……。

 魔術に霊力を使うというのは昨今の流行りには背いているように思います。ぶっちゃけて言うとわかりづらいですね。

 

 もっとスマートに、法弓という武器には魔族の力が宿っていて、それを扱うには自身の精神力をコントロールしなければならない、とかの方が設定としてしっくりきた気がします。魔剣というのは法弓の亜種となるわけです。

 これは根本的な解決ではなく、言霊的な問題ですのであまり参考にはならないのですが。それでも随分とわかりやすくなっていると思います。

 

 霊力という点を活かしたいのでしたら、もっともらしい設定をもっと付随しましょう。例えば弓術に使われているルビをなくしてもっと和風な術名に変えてみるとか。

 まだ世界観を読者に提示しきれていないのに、和ではない要素をフューチャーしすぎたせいで設定矛盾を感じます。

 これは大きく何度も取り上げられる重要なワードでしたので個別で触れましたが、正直世界観のところで言ったことと同じですね。和風要素の使い方を根本的に勘違いしています。

 

 あとの弓術で不思議なところといえば、これは作者さんに前にも少しだけお伝えしたところなのですが、威力や霊力の消費、術の形や名称についての基準が定まりきっていませんね。

 多分感覚でそのあたりの設定を決めたせいか、弓術というものがふわふわとしています。このままでは弓である必要すらありません!

 そう、この物語の弓から放たれる弓術は、専ら魔法です。魔法との違いはなんですか? と聞かれた時に弓を持っていないと使えません、としか答えられないくらいに魔法です。

 弓術、弓であるということを活かすならばもっと弓でしかできないことを取り上げてほしいです……。梓弓をイメージしているのでしょうが、これでは杖を弓に取り替えただけとしか思えません。こだわるべき要素を手抜いたらだめですよ!

 映像ならばごまかせますが文章ではごまかせません! そこに書いてあることがすべてなのですからもっと気を使いましょう!

 

 

 さて、めちゃくちゃ長いですね。でも、指摘したいことを一つ一つ言っていくとどんな作品でもこれくらいの長さになります。

 ただのレビューや感想だと気を使って言っていないだけで、辛口と言われれば言いたいことは全て言います。

 これは細かいところまで含むかもしれませんが、実際に直した時にもっとステップアップできると思っている箇所だけを取り上げているので、こんな文章が気に入らない! という感情論は含んでいないことを今一度ご了承ください。

 

 

 というわけで次は展開についてですね。これが終われば残るは文章についての細かい指摘くらいです。

 この物語の展開なのですが、早いです。話の要所はきちんと掴めているので、構成はしっかりと組めていることはとても評価が高いのですが、何分性急に急転直下します。

 そして、その部分を書ききれていないように感じます。作者さんの中ではその変化は当然のことで、なるべくしてなったものなのだろうとは思います。

 ですが、読者からするとあまりにも早すぎてチョロく見えてしまったり、陳腐に見えてしまったりします。

 

 これも前に作者さん本人に指摘させていただいたことですが、主人公の心情が大きく動く場面でこの癖が出やすいように感じます。

 大きく変化が出る場面がそこに集中しすぎているからな気はするので雑感でしかないですが、日常においては捉えきれている心情が、不安定になった途端に描写不足になっている感が否めません。

 ワナビな主人公の心理面まで踏み込んだ作品ですから、そこをもう少しどっしりと腰を据えて書いてもいいような気がしました。

 今のままだと少しばかり感情に重みが足りません。一人称作品であることが裏目に出ていますね。主人公目線にこだわりすぎるあまり、そこを他人に伝わるように表現できなくなっているわけです。

 アリアをうまく活用するなどして多少客観視するくらいの方がよく伝わります。今の自問自答形式だと全然足りません。努力は見て取れるのですが。

 

 もとの構成はきっちりとしていますから、大段落ではなく小段落。細かいディティールを色々といじってみるといいですね。これは世界観などにも言えます。

 モデルとしている材料はいいですから、頑張って調味料を整えておいしい料理を作ってもらいたいところです。

 

 というわけで、これで長かったこのレビューっていうか批評も最後になりますね。

 文章についてです。

 これは慣れの問題ですので、長く続いていけばいくらでも改善しますから、今の時点での問題点を書かせていただきます。

 まず、たたる文章です。

 これはある種の界隈で使われる言葉ですが、文末に~た、~る、を非常に頻繁に使用する文章のことを言います。

 この作品ではそうならないように文末表現に気を使っているのが見て取れるのですが、甘いです。

 たたっています。たたられています。

 

 厳密にはたたる文章ではないのですが、自分の頭の中で考えているのとは違って無機質な感じが出ています。

 僕はそれも含めてたたる文章と呼んでいます。

 あなたは頭の中でそんな無機質な考え方をしていますか? 違うでしょう。

 ~しよう、~したい、に始まり、場合によっては倒置法によって文章がひっくり返ることもあるでしょう。そういうことを考えたりはしないですか?

 あなたが頭の中でたたる文章で物事を考えているというのならば連絡してください。それはとても興味深いことです。

 

 ちなみに単純な解決法としては、すべての文末を1回ごとに変えて、3~4回に1回くらいしか文末がかぶらないのがベストですね。それくらいやれば、文章が生き生きとしてきます。

 これは初心者にありがちな失敗で、自分の中ではイメージがあるのでそこまで思考が回らないんですよね。最後が~た、~る、だけでも作者は十分に理解できてしまうわけです。

 読書を多くされる方だと違和感を感じると思うのですが、最近のラノベなんかではこれを無視する作品も多いので一概には言えません。

 キャラクターは生きているんです。あなたと同じように思考するのですよ?

 

 

 というわけで、今回はこんなところでしょうか。

 めちゃくちゃぼろくそに言っているように見えますが、僕はこの作品好きですよ?

 初めての挑戦でこれだけ書けたというのならば、それは才能です。この作者さんはこれからぐんぐん伸びていく期待の原石です。

 まだまだ荒削りですが、これからどんどん磨かれて魅力的になっていくでしょう。

 

 今回は弓術世界の魔剣使いについての記事でした。

 あなたも、ぐりーてぃあさんの放つ矢にハートを射抜かれてみてはいかがですか?

 ランキング上位常連なのは当然の作品ですよ!

カイナさん作 バベルの海

 

 今回のレビュー作品は、カイナさん作のバベルの海です。

 

 まず初めに言います。

 

カクヨムで一番素晴らしい物語は横浜駅SFでもオレオでもなく、このバベルの海です。

 

 これを上回る物語は今のカクヨムにはありません。断言とともに保証します。

 

 

 一つずつ解説していきましょう。

 

 まずこの物語はジャンルとしては旅物エポックファンタジーに分類されます。

 この時点でエポックファンタジーとはなんぞや? となる人が多いのは当然でしょう。

 

 エポックファンタジーとは、ハイファンタジーをさらに狭義に絞ったものだと僕は解釈しています。基本的には中世欧風な異世界ファンタジー作品のことを指すのが一般的です。

 具体的に作品を上げていけば、狼と香辛料やマグダラで眠れ、ゼロから始める魔法の書、あたりが代表的です。作者さんもこのあたりの本は読み込まれているそうですから、間違いでないでしょう。

 

 そして、旅物とついているのはこれがバイクに乗って海を探しに行く物語だからです。ある目的を持って街々を旅するファンタジーを旅物といいます。

 代表的なのは、先程も上げた狼と香辛料他ニ作品にキノの旅などが有名です。

 

 そしてバベルの海は、獣耳少女を伴ってバイクで青空のもと海を求めて塩原をバイクで突っ走る素晴らしいファンタジー旅小説です。

 

 もうこのイメージだけで面白さが確約されています。実際にこの絵面をあらすじから連想した僕は、カクヨムオープンの日からこの作品に目をつけていました。

 当然のようにその想像は当たり、とても感動したことはここまでの絶賛具合から伝わるかと思います。

 

 このサイトの最初の紹介作品がRustなあたりからもわかるとおり、僕は旅物エポックファンタジーを愛しています。

 狼と香辛料はすべてのファンタジー書きのバイブルだと思っていますし、自身の電撃への初公募も旅物エポックファンタジーでした。

 そこに獣娘が絡んでくるバベルの海を僕が愛してしまうのもむべなるかなというものです。(僕はケモナーの極みみたいなやつです。)

 僕の好きな要素だけを詰め込むとこんなお話が出来るんだろうなぁ、と思いながら読み進めさせていただいていました。

 

 さて、ここまでの話ではこの話の真の魅力が伝わっていないと思われます。

 どれだけ僕の好きなものが多いかはこれで伝わったと思うのですが、この物語それだけでは全然ないのです。

 

 とりあえず会話文とキャラクター性について語りましょう。

 このバベルの海の会話表現は、さすがと言わざるを得ない細かな配慮が配られています。

 物書きの人たちの中には、会話文をつくってしまう方がなかなか多く見られるのですが、この方は違います。自然な会話、その中に織り込まれる読者を飽きさせないテンポのいいジョーク、それでも崩れることのないキャラたちのキャラクター性。

 

 そう、キャラクターたちが一人ひとり生き生きとしていて、まるで本当にこの世界が存在していてそれを写し取ったかのようなのです。

 心情描写にもそれは現れていて、下手に演出のためにつくられた感情を主人公はじめヒロインも登場人物の誰もが持ちません。

 僕たちは単なる物語ではなく、彼らの本当の旅路を見守ることになるのです。

 

 これらは風景描写にも言えます。

 白の大地と呼ばれる海の干上がった塩原が主な舞台となるのですが、そこでの情景が目の前にあるかのように、余りにもリアルに書き記されます。

 そこでの人々の生活の描写は、あたかも本当にそこに人が住んでいるかのように錯覚させ、隅々まで描写された世界は絵がないのにも関わらず漫画のような迫力を持って僕たちに語りかけてきます。

 

 題材だけではないのです。確かな表現力、緻密な文章力の上にこの物語は組み上げられています。

 

 そして、このままだとずっと語り続けてしまいそうなので、最後にヒロインのリンちゃんの話だけさせていただきます。

 主人公イスカ君の活躍や鳴術のすごさなんかは、作中でぜひあなたに自分で知ってほしいものですから。

 

 というわけでヒロインのリンちゃんです。素直です。かわいいです。獣耳です。

 獣娘です!

 大事なことなので叫びました。かわいいです。なんかもう愛くるしいです。

 なんか愛が鼻から溢れてきそうな感じです。読めばわかります。僕じゃあ彼女のかわいさを表現しきれない……。伝えたいのに伝わらない感じがもどかしいです。

 

 まぁいまいち伝わりづらいレビューとなってしまったのですが、ここまでの世界観の完成度、キャラクターの魅力、文章表現の整然さを持ち合わせた小説は、なろうでもハーメルンでもほとんど見ません。

 バベルの海を読むためだけにカクヨムに来る価値ありですよ!

 

 本格旅物エポックファンタジー、バベルの海。

 あなたもこの旅路の果てに獣の国にともに行ってみませんか?

 

 

※追記です

 諸事情により現在カクヨムで読むことができません。

 作者さんのTwitterプロフからpixivの本作品に飛ぶことができるので、そちらでお読みください。

 カクヨムに復帰なされた場合はこちらの追記は削除いたします。

山幸彦さん作 名湯『異世界の湯』開拓記

 

 今回のレビュー作品は、山幸彦さん作の名湯『異世界の湯』開拓記です。

 

 こちらの作品も、作者さんの方から読んでいただきたいとのことで読み始めたのですが、読み始めた時点で既にランキング上位。ぶっちゃけて言ってしまえば自作よりも常に上にいたので、敵に塩を送るといった感覚で読み始めました。

 

 ところがどっこい、これがまたランキング上位作品に収まるべくして収まった作品。毎回温泉回という特徴を活かした面白さに満ち溢れていました。

 

 まずこの作品なのですが、特徴的なのはすべての回が温泉回。温泉に入らない話はありません。何があろうと温泉を優先。これが主人公の行動原理でもあります。

 

 そして、サービスシーン満載! 出てくる女性陣と躊躇いなく混浴し、服を着たまま温泉に入るとは何事か、と一喝し脱がしてしまいます。いや、女性に対してそれはどうなんでしょう。そして、女性陣もそれを受け入れるの早すぎやしませんかね。

 まぁ、おかげで毎回全裸の美女美少女たちがてんこ盛りの素晴らしい作品となっています。

 

 温泉サイコー!!

 

 さらにこの作品、実は細かいことに温泉に対しての知識が深い。作者さんもきっと温泉好きなのではないかな、と思うような情報ばかりです。これを読んでいるだけで温泉地に旅行に行きたくなるような、そんな知識が多いのです。

 

 まぁ、知識だけではなく旅情を掻き立てるその描写にこそ、この旅行したいという気持ちを起こさせる根本がある気はします。温泉に浸かり、まったりと空に浮かぶ月でも眺める。作中ではさらにロケーションの多い温泉が数多く登場します。貴方も温泉に浸かりたくなること間違いなし!!

 

 ここまで温泉について語ってきましたが、この作品のよさはそこだけではありません。

 なんと、ヒロインが軒並みかわいいのです。

 いや、何を当たり前のことを言っているのだと思われるかもしれませんが、ヒロインたち一人一人のキャラ立てがしっかりとしていて、かわいいだけではなくきちんとした個性、自分を獲得しているのです。しっかりと理念を持ったキャラクターを想像するのは難しいことです。正直これができる作者さんというだけで先が気になって仕方ありません。

 

 温泉とかわいいヒロインたちが売りの名湯『異世界の湯』開拓記。

 あなたも、温泉の魅力にとりつかれてみてはいかがでしょう?

雪車町地蔵さん作 Rust ~錆び逝く物語~

 

 このサイト初のレビュー作品は、雪車町地蔵さんのRust ~錆び逝く物語~となりました。

 

 この作品との出会いについてなのですが、こちらは作者さんの方から読んでもらえないかと言われて読み始めた作品になります。しかし、読み進めるにつれ僕は一つの思いを抱き始めました。どうして僕はこれを自分で見つけることができなかったのか。こんな素晴らしいのに埋もれている作品を見つけることこそが、自分の存在意義ではないのか、と。本当に悔しかったです。

 

 さて、そんな僕の後悔は横に置いておくとして、こちらの作品についてのレビューになります。

 

 まずこの作品なのですが、SF的な文明が進みすぎたがゆえに滅んでしまったあとの世界を舞台としています。ジャンルもSFですしね。ですが、むしろ話の筋としてはファンタジーを意識しており、タグにもあるとおり王道ファンタジーと言ったほうがわかりやすい内容に仕上がっています。

 

 ついこの間、縁あってSFの世界観でファンタジーをやる作品を読んだばかりだったので、ピンときました。SFとファンタジーという区別は、そこに理屈を求めるかしか違いがないと思っている僕からすると、紹介しやすい分類としての意味しかないのですが。

 

 この作品、そのファンタジー要素を支えているのが『錆』と『浄歌士』です。世界を覆い尽くさんとする『錆』と、それを祓うのを生業とする『浄歌士』。この二柱を軸にして話は進んでいきます。その成り立ちには確かにSF的な根拠が用意されており、納得のいくものとなっているのですが、テイストが完全にファンタジーのそれであり、ラストシーンに至っては完全に王道ファンタジーの最終回となっています。

 

 そう、この作品のラストシーン。これがまたすごいのです。7章からの怒涛の展開は、まさに最終楽章にふさわしく、15万文字の作品でよくぞここまでこのシーンを際立たせることができたな、と仰天するしかありません。作者さんがご自分で仰ってるようにスロースタートな物語なのですが、だからこそこの迫力は生まれたのでしょう。

 

 この作品、始まり方は正直重たいです。読者の中には1章を読みきるのもつらい方もいるかもしれません。重たいだけではなく、作者さん独自の書き方が少々人を選ぶものだからです。しかし、先に述べたとおりこれに慣れてしまえば、この作品はとても素晴らしいものに変化します。繊細で緻密な心理描写、あたかも今目の前にあるかのように描き出す情景描写。そして、世界観設定の精緻さにも驚愕を禁じえません。いつからか、あなたもこの作品の虜になっていることでしょう。

 

 実は僕は最近とみに泣けないのです。感動するほどの作品を見たときだけ涙を流すことができます。最近で涙を流した作品と言えば、『ワンピース』ですとか、『ノーゲーム・ノーライフ』、『アイドルマスターシンデレラガールズ』あたりですね。どれも映像作品ばかりです。なのですが、この作品。僕を泣かせてきました。文章作品を読んでいて涙を浮かべたのは本当に久方ぶりで、前回は『勇者イサギの魔王譚』の完結の時だったと記憶しています。

 それだけこの作品のラストシーンは感動します。ぜひ最後まで読まれることを推奨いたします。

 

 長々としたレビューになってしまいましたが結論から言えば、なぜこの作品がこんな低評価なんだおかしいじゃないか! という僕の憤りから生まれたレビューです。最後まで読んだとしても絶対に時間の無駄にはなりませんから、ここはひとつ騙されたと思って読みに行ってみてはいかがですか?

レビューサイト開設によせて

どうも見ての通りの文学少年、寝暗幻想曲です。

この度レビューサイトを開設する運びになりました。

 

振り返ってみれば小説を読み始めて13年、web小説に触れて7年、執筆を始めて5年。

最近に至っては編集作業にまで手を出し始めました。まぁこれはいろいろな縁と幸運の賜物なのですが。関係者の方々には感謝してもし足りません

さて、僕は本とふれあいここまで生きてきました。

執筆を始めても読者であることはやめず、むしろ執筆の方よりも読者としての活動の方が多かったように記憶しています。

小説家になろう、今は亡きにじファン、Arcadiaハーメルン、そしてカクヨム。

数々の小説サイトでいろいろな作品を読んできました。

そのとき、この作品を紹介したい! と友達に勧めることもありましたし、2chのハーメルンのスレッドで毎日レビューを書くような日々もありました。

今もカクヨムではレビュアーとして、いくらかの作品にレビューを書かせていただいています。本当はレビューしたい作品がたくさんあるのですが、手が回っていなくて書けていない作品もあります。

 

そう、僕は自分の読んだ素晴らしい物語をみなさんにも読んでいただきたい!

 

そのためには、カクヨムでのレビュー活動とTwitterでの拡散だけでは不足と判断しました。別にそれらの活動もやめるわけではありません(実際それらの活動は効果的であり辞める理由がないのです)が、もっと多くの人に紹介するにはこれだけでは狭すぎると思ったのです。

このサイトではカクヨムの作品だけでなく、自分の好きな作品をどんどん紹介していきます。それは一次創作かもしれませんし、二次創作かもしれません。web小説なこともあれば、書籍はたまた漫画であったりもします。

僕は自分の目利きにある程度の信頼を置いています。

それはこうやってレビューサイトを作って作品を紹介すれば、みなさんが読みたくなる作品がたくさん見つかると確信しているくらいです。

今までも、これは面白い! と思った作品をレビューした結果、それがランキング作品になることはままありました。これからも、そうやってランキング作品まで成長できるような、埋もれてはならない良作たちを発掘する作業を続けていきたいのです。

 

このサイトはそのような願望を抱く主と、その友人二人の運営によって動いています。

基本的には主の読書録となりますが、友人二人も読書を愛することは変わりません。彼らが記事を書く事もあるでしょう。

たまに読書録以外のものも交じるかもしれませんが、このサイトはレビューサイト。主のおすすめするものを紹介するサイトです。それだけは違えるつもりはありません。

 

みなさんこれから宜しくお願いいたします。