ぐりーてぃあさん作 弓術世界の魔剣使い
宣伝です
— ぐりーてぃあ@カクヨム累計14位 (@greetear111) 2016年4月6日
「弓術世界の魔剣使い」
序章完結しました!
まだ読んだことのない方もこの機会に是非!
ツイッターやカクヨム内での感想、評価、批判など全部お待ちしていますよーhttps://t.co/apAxCkAqCb
はい、今回のレビュー作品は、ぐりーてぃあさんの弓術世界の魔剣使いです。
ファンタジー上位に常に食い込んでいる作品ですからご存知の方も多いのでは?
今回は作者さんからも辛口で評価して欲しいと言われていますので、かなり厳しめに言及していこうと思います。
レビューと評価を同時に行う感じです。
まずはじめに言っておきたいのは、確かに辛口に評価していきますが、その面白さは確かであり、一読の価値がある作品であることに間違いはないということです。
これをお忘れなきよう。
さて、まずはこの作品をざっくりと紹介してきます。
この物語は、弓が最強な世界において魔剣を手に入れたワナビな主人公が活躍していく和風ファンタジーです。
ちなみにワナビとはwannabe のことであり、want to beの省略形をもじった俗語です。何かに憧れなりたがる者を揶揄する類の意味合いを持ちます。
基本的に、カクヨムにいるプロ作家以外の作者さんのすべてがワナビ作家であると言ってもいいでしょう。そういった感じの言葉です。
というわけでどこから触れていきましょうか。褒めるべき点からいきましょうか。
ヒロインがかわいいです。
いや、毎回言っているような気もしますが、本当です。適当に言っているわけではないんですよ?
作品に人を寄せ付ける目玉と言ってもいい存在であるヒロイン。それがかわいい作品なんて、ごまんとあると皆さんは言いたいのかもしれません。
ですが、みなさんの知っているヒロインたちは本当にかわいいのですか? 見た目がいいだけの間違いではありませんか?
安心してください。この作品のヒロインは花丸をあげたいくらいかわいいです。
問題は本当にヒロインであるかどうかが怪しいところなのですが……こちらは読んでのお楽しみですね。
この作品のヒロイン、伊予里悠ちゃんは内面も素敵な女の娘です。後述しますが、この作品が和風ファンタジーだと認識できるのは、大部分が彼女の存在が大きいというのが僕の論です。
大和撫子を現代風にアレンジしたらこんないい娘が出来上がるんでしょうね……嫁にもらいたいです。ちょっとばかり猟奇的なところもありますがそれくらいはご愛嬌というやつでしょう。
そして、カクヨムの方のレビューでも書かせていただきましたが、これが一番の目玉です。
弓術!
なんとこの世界、珍しいことに剣でも魔法でもなく弓が最強です。
正確には弓そのものではないのですが、弓をメインに置こうとするその発想はなかなかでてきません。それだけでも目を通す価値があるでしょう。
これについては詳しく後述します。いいところと悪いところがありますので。
さて、あといいところはキャラ造形でしょうか。
きちんと主人公とヒロインのキャラが立っています。まだ序章でしかないので判断しづらいところなのですが、主人公の動機がしっかりしていて、行動に意味をきっちりと持たせられているところがいいですね。
ワナビな主人公というのをうまく描き出しています。
ですが、逆に言ってしまえば主人公格のキャラクターしかしっかりと作りこまれていません。
脇役で登場するキャラクターが少ないこと、そしてそのキャラクターが無難にしか作られていないことは減点です。確かに無難な作りにはなっていますがそれ以上を読み取れない。及第点ではあるのですが、もう少し魅力的に描いてもいいかなと思いました。
キャラクターが少ないというのは名前がついているキャラクター、つまり準レギュラー格のキャラクターが少ないということです。
ここのキャラクターが少ないと物語が単調になりがちです。その点ハーレムというのは逆にやりすぎてしまった例ですね。管理しきれないキャラを出すのは論外ですが、少なすぎるのもまた話の展開に支障をきたします。
ここについてはこれから増えていくと予想されるのであまりつつきませんが、現状だとそう考えてしまうという話でした。
ここからは残念ながら指摘が多くなってしまいます。
いい物語であるからこそもっと伸びて欲しいですからね。
正直言うとファンタジーでもアイデアならばこれがダントツだと思っています。
バベルの海は僕の趣味が完全に合致した作品なので、また別枠になるのですが……。
というわけで、まずは世界観に触れていきましょうか。
最初にこの作品は、弓が主流の世界で魔剣を使う主人公が活躍する和風ファンタジーだと説明しました。
その上で言います。
ぜんっぜん和風ファンタジーだと伝わってきません。
地名は確かに和風ですし、剣道場や弓道場、味噌汁などいろいろな方向から和をイメージしていることは読み取れるはずなのですが、全くそう認識できません。
なぜなら、話の筋でやっていることが和風ではないからです。
弓術、魔剣。ええ、よい設定です。ですが、これを和風でやる意味はあったのでしょうか?
洋風なファンタジーだったとしても、全く違和感を感じずにこの作品を作りなおせるだろうと僕は思います。
それはですね、まず一つに最初に外国から逃げてくる登場人物を出したこと。
二つに弓や弓術の名前にルビで全然和風ではない名前をつけていること。
そして三つ目に和の世界観でしかできないことを全くやっていないからです。
この作品を和風でやっているのは、作者さんにとって弓か剣という存在が和風というものの括りだったか、あえて和風でこれをやったら面白いに違いないと思ったからでしょう。
和風ファンタジーを書いているものとして言います。
この作品は和風ファンタジーを名乗れません。カテゴリ的には和風ファンタジーですが、それまでです。
拙作を引き合いに出すならば、拙作では限られた状況下を除けば徹底的にひらがなと漢字しか使わない縛りをかけています。
カタカナが使われる機会を数えてみれば規則性が見つかります。
それくらいやるのはやりすぎですし、実際そんなことを他の作者さんには望みません。ですが、なんとなくでしか和風と判断できないのはそれはどうなのでしょう?
繰り返して言いますが、序章部分ですのでこれからはもっと和の世界観でしかできないことが出てくると信じています。
ですが、今の時点ではこれが洋風ファンタジーなり現代アクションとしてリメイクされても、違和感を感じない程度にしか思えません。
次に行きましょう。キャラクター造形、世界観と触れてきたので次は弓術について語りましょう。
厳しめにいきます。
まず弓というものを戦闘のメインにおいたのはとても素晴らしいです。今までになかなかないアイデアです。これだけで目を通す価値が有ることは前述しました。
ですが、それに付随する設定がいけません。これは根幹に関わるところですから、今から修正することもできません。自作から活かしていただくために書きます。
なぜ弓術という設定を作ってしまったのか? いえ、弓術はいいです。弓を戦闘のメインに置くからには必殺技が必要です。剣で言うソードスキルです。
ですが、霊力という設定はどうしてしまったのでしょう? 弓、具体的には法弓を使えば霊力が扱えるようになる。弓を握る意外にはほんのひと握りの人間しか霊力を扱えない。
……その設定いりますか?
魔剣を出すにあたって必死に弓との関係を考えたのでしょう。その架橋として考え出された設定だとは思うのですが、もう少し工夫できたように思います。
霊力という言葉を使えば和風っぽくなるという思いつきも見えますね。魔族やエルフ、ドワーフなどの他種族が出てくるのに霊術というネーミングはいかがなのでしょう……。
魔術に霊力を使うというのは昨今の流行りには背いているように思います。ぶっちゃけて言うとわかりづらいですね。
もっとスマートに、法弓という武器には魔族の力が宿っていて、それを扱うには自身の精神力をコントロールしなければならない、とかの方が設定としてしっくりきた気がします。魔剣というのは法弓の亜種となるわけです。
これは根本的な解決ではなく、言霊的な問題ですのであまり参考にはならないのですが。それでも随分とわかりやすくなっていると思います。
霊力という点を活かしたいのでしたら、もっともらしい設定をもっと付随しましょう。例えば弓術に使われているルビをなくしてもっと和風な術名に変えてみるとか。
まだ世界観を読者に提示しきれていないのに、和ではない要素をフューチャーしすぎたせいで設定矛盾を感じます。
これは大きく何度も取り上げられる重要なワードでしたので個別で触れましたが、正直世界観のところで言ったことと同じですね。和風要素の使い方を根本的に勘違いしています。
あとの弓術で不思議なところといえば、これは作者さんに前にも少しだけお伝えしたところなのですが、威力や霊力の消費、術の形や名称についての基準が定まりきっていませんね。
多分感覚でそのあたりの設定を決めたせいか、弓術というものがふわふわとしています。このままでは弓である必要すらありません!
そう、この物語の弓から放たれる弓術は、専ら魔法です。魔法との違いはなんですか? と聞かれた時に弓を持っていないと使えません、としか答えられないくらいに魔法です。
弓術、弓であるということを活かすならばもっと弓でしかできないことを取り上げてほしいです……。梓弓をイメージしているのでしょうが、これでは杖を弓に取り替えただけとしか思えません。こだわるべき要素を手抜いたらだめですよ!
映像ならばごまかせますが文章ではごまかせません! そこに書いてあることがすべてなのですからもっと気を使いましょう!
さて、めちゃくちゃ長いですね。でも、指摘したいことを一つ一つ言っていくとどんな作品でもこれくらいの長さになります。
ただのレビューや感想だと気を使って言っていないだけで、辛口と言われれば言いたいことは全て言います。
これは細かいところまで含むかもしれませんが、実際に直した時にもっとステップアップできると思っている箇所だけを取り上げているので、こんな文章が気に入らない! という感情論は含んでいないことを今一度ご了承ください。
というわけで次は展開についてですね。これが終われば残るは文章についての細かい指摘くらいです。
この物語の展開なのですが、早いです。話の要所はきちんと掴めているので、構成はしっかりと組めていることはとても評価が高いのですが、何分性急に急転直下します。
そして、その部分を書ききれていないように感じます。作者さんの中ではその変化は当然のことで、なるべくしてなったものなのだろうとは思います。
ですが、読者からするとあまりにも早すぎてチョロく見えてしまったり、陳腐に見えてしまったりします。
これも前に作者さん本人に指摘させていただいたことですが、主人公の心情が大きく動く場面でこの癖が出やすいように感じます。
大きく変化が出る場面がそこに集中しすぎているからな気はするので雑感でしかないですが、日常においては捉えきれている心情が、不安定になった途端に描写不足になっている感が否めません。
ワナビな主人公の心理面まで踏み込んだ作品ですから、そこをもう少しどっしりと腰を据えて書いてもいいような気がしました。
今のままだと少しばかり感情に重みが足りません。一人称作品であることが裏目に出ていますね。主人公目線にこだわりすぎるあまり、そこを他人に伝わるように表現できなくなっているわけです。
アリアをうまく活用するなどして多少客観視するくらいの方がよく伝わります。今の自問自答形式だと全然足りません。努力は見て取れるのですが。
もとの構成はきっちりとしていますから、大段落ではなく小段落。細かいディティールを色々といじってみるといいですね。これは世界観などにも言えます。
モデルとしている材料はいいですから、頑張って調味料を整えておいしい料理を作ってもらいたいところです。
というわけで、これで長かったこのレビューっていうか批評も最後になりますね。
文章についてです。
これは慣れの問題ですので、長く続いていけばいくらでも改善しますから、今の時点での問題点を書かせていただきます。
まず、たたる文章です。
これはある種の界隈で使われる言葉ですが、文末に~た、~る、を非常に頻繁に使用する文章のことを言います。
この作品ではそうならないように文末表現に気を使っているのが見て取れるのですが、甘いです。
たたっています。たたられています。
厳密にはたたる文章ではないのですが、自分の頭の中で考えているのとは違って無機質な感じが出ています。
僕はそれも含めてたたる文章と呼んでいます。
あなたは頭の中でそんな無機質な考え方をしていますか? 違うでしょう。
~しよう、~したい、に始まり、場合によっては倒置法によって文章がひっくり返ることもあるでしょう。そういうことを考えたりはしないですか?
あなたが頭の中でたたる文章で物事を考えているというのならば連絡してください。それはとても興味深いことです。
ちなみに単純な解決法としては、すべての文末を1回ごとに変えて、3~4回に1回くらいしか文末がかぶらないのがベストですね。それくらいやれば、文章が生き生きとしてきます。
これは初心者にありがちな失敗で、自分の中ではイメージがあるのでそこまで思考が回らないんですよね。最後が~た、~る、だけでも作者は十分に理解できてしまうわけです。
読書を多くされる方だと違和感を感じると思うのですが、最近のラノベなんかではこれを無視する作品も多いので一概には言えません。
キャラクターは生きているんです。あなたと同じように思考するのですよ?
というわけで、今回はこんなところでしょうか。
めちゃくちゃぼろくそに言っているように見えますが、僕はこの作品好きですよ?
初めての挑戦でこれだけ書けたというのならば、それは才能です。この作者さんはこれからぐんぐん伸びていく期待の原石です。
まだまだ荒削りですが、これからどんどん磨かれて魅力的になっていくでしょう。
今回は弓術世界の魔剣使いについての記事でした。
あなたも、ぐりーてぃあさんの放つ矢にハートを射抜かれてみてはいかがですか?
ランキング上位常連なのは当然の作品ですよ!